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2015年度BDLO「オーケストラのためのワークショップ」参加報告
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於 ドイツ連邦共和国 音楽アカデミー(ハンメルブルク) |
2015年5月22日(金)〜26日(火)
公開コンサート:5月25日(月)16:00開演 聖ヨハニス教会(ヴュルツブルク市) | |
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曲 目 |
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A.ブルックナー:交響曲第6番 |
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出演者 |
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指揮:リダ・ムルタダ
JAOからの参加者7名(ヴァイオリン4名、ヴィオラ2 名、チェロ1 名.男性1名、女性6名)
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「社団法人ドイツ・アマチュアオーケストラ連盟(以下BDLOと略)」と日本アマチュアオーケストラ連盟との友好協定が結ばれてちょうど20年が経ちました。この間多くの日独奏者が両国を訪れ、オーケストラでの交流をきっかけに日本語やドイツ語を習い始めたり、家族ぐるみのお付き合いに発展させたりと、音楽のみならず互いの文化や言語への理解も着実に深まりつつあるようです。
今回のワークショップは、2015年5月22日(金)から26日(火)まで、ドイツ連邦共和国、ワインの産地として知られるハンメルブルクの音楽アカデミーにて開催され、JAO加盟団体所属の弦楽器奏者7名が招聘されました。
ブルックナーの交響曲を指揮されたリダ・ムルタダ氏はドイツ生まれ。アラブ系音楽家として史上初めてイスラエルで指揮をして注目を浴び、現在国際的に活躍する若手指揮者です。
ところが今年はワークショップの始まる2日前から、国内全土に鉄道網をもつ「ドイツ鉄道(DB)」が無期限ストライキを行い、約3分の2の列車が運休する事態となってしまいました。幸いスト情報が早い段階で判明したため、参加者の皆さんは迅速に行動され、ワークショップ初日には日本人数名の到着が1時間遅れた程度ですみました。その後は混乱もなく、全員が無事帰国の途につきました。
以下、初参加のお三方、阿部万寿代さん(徳島交響楽団)、對馬ふみ子さん(アンサンブル・グリューネ)、S.Sさん(我孫子市民フィルハーモニー管弦楽団)に簡単な感想と今後参加される方への助言を伺いました。ご一読いただければ幸いです。
なお来年のBDLOワークショップは2016年5月13日から16日までヴァイマールにて開催されます。日本人向けの募集要項は、今年12月末にJAOを通じて発表される予定です。
最後に、今回のスト情報の収集にあたって頂いたドイツ在住大野千尋さん、お世話くださったBDLO事務局T.タンネンベルクさんとS.ヘルゲルトさんに心より御礼申し上げます。
JAO日独交流担当 穴山朝子(アンサンブル・グリューネ)
【開催概要】
2015年5月22日(金)18:00集合、19:30練習開始
公開コンサート:5月25日(月)16:00開演 聖ヨハニス教会(ヴュルツブルク市)
チェックアウト:5月26日(火)朝食後解散
指揮: リダ・ムルタダ
曲目: A.ブルックナー: 交響曲第6番
JAO参加者7名(ヴァイオリン4名、ヴィオラ2 名、チェロ1 名.男性1名、女性6名)
【今回参加を決めた理由は?】
・開催場所がドイツで、滞在中に楽器が弾けてオーケストラ演奏も体験でき、楽器(チェロ)の貸与もある点
・JAOフェスティバルで、BDLOに参加したことがある方から「これに参加すると人生が変わるから、絶対に行った方が良い」と言われた。
・(ライプツィヒ)ゲヴァントハウスの元奏者(ヴィオラとチェロの講師)と同じ舞台で
演奏できるのは、それだけで幸せです。
・本場ドイツのオーケストラと一緒に演奏することは素晴らしい 経験になると思ったから。
【現地に到着するまでのできごと】
・入国審査で「What do you do in Germany?」と聞かれて、「ヴァイオリンを弾きにきた」と答えたら「は?」という顔をされて焦った。幸い隣にドイツ語ができる日本人の方がいて、ドイツ語で説明してくれたので入国できたが、入国目的をきちんと英語で説明できるよう準備した方が良いと思った。
・楽器はbamのヴァイオリンケースでいきましたが、特に何も言われず機内に持ち込めました。私は三角ケースを用意しましたが、ヴィオラの方は四角ケースで来ていて機内に持ち込みできたそうなので、あえて三角ケースを購入しなくても良さそうです。
・出入国はなにも問題なく、移動はドイツ国鉄のストに当たったけれど全部の電車が止まっていた訳ではないので、動いている電車に乗り、すべてスムーズに運びました。
【現地の状況】
・素晴らしい景色と環境に恵まれたところ。
・ハンメルブルクについて、ガイドブックに情報がなく、とてつもない田舎だと聞いていました。確かに無人駅で売店におじさんが一 人いるだけ。トイレの場所を訪ねたら、駅にはないので左斜めにあるバーにいくよう言われました。夕食後に練習があるけれど仕方な いので(?)ビールを飲んでトイレを借りました。
早めに着いたのでお迎えのバスを待つ間、バーで地元の人たちと 楽しく時間をつぶしましたが、実は宿舎まで歩いても20分程で行ける距離でした。駅から町まで10分ほど、町には公衆トイレも あったのを後で知りました。地図があったらよかったと思いました。
宿舎は美しい自然環境の中にあり、モダンで広く新しく清潔でWi-Fiもよく入りました。日本の山奥のひなびた民宿とはイメージが違い虫も出ません。
・ハンメルブルクは町並みもとてもきれいです。昼食後〜14時半のティータイムまでは自由時間だったので、町に行ったり(教会で結婚式が行われていました)、お城に上ったり、観光も楽しめました。
・休憩の時間に古い町並みを散歩したり、丘の上に登って小径を散歩して堪能しました。
宿舎は音楽の練習部屋がいくつもあり、パート練習や個人練習ができるようになっていてよかったです。Wi-Fiも使えました。
・宿舎は思った以上にきれいでした。個人的には枕と布団がふかふか(柔らかめ)でうれしかったです。タオルは各自に2枚ずつ用意されていました。シャンプーや石けんはありませんでしたが(持参したので問題なし)、収納スペースは充実、クローゼットにハンガーが数本あって便利でした。
【宿舎の食事等】
・食事は朝食のパンがすごく美味しかったです。
・食事ですが、朝は普通、昼は一番たっぷりしていてスープ・メイン・付け合わせ・デザートが出ますが、なぜか飲み物は一切出ません。夜は日本と違いシンプルで、赤や紫の色のついたお茶が出ます。 夕食後ケラーに行けば、自己申告制の後日精算で冷蔵庫からビー ル・ワイン・水など買うことができます。つまみはありません。
・食事面ではベジタリアン専用のテーブルが設けられ、毎回ベジタリアンの方たちと楽しく食事ができました。
【指揮者やトレーナー、参加者とのコミュニケーションの問題】
・ワークショップで一番困ったのは、指揮者のドイツ語が理解できなかったことです。指揮者の言葉を一言残らず聞いて意図するところを理解しなければ、オーケストラのメンバーと一つになって音楽を作り上げることができないのに、全くちんぷんかんぷん、お隣さ んの好意で出る場所を指してもらいながらただ弾いているだけというのは何とも情けない限り。 せめて1から10までの数字と前・後ろ、アルファベットのドイツ語読みだけでも聞き取れれば、最低限どこから弾くのかわかるの に・・・と思いました。
午前中はパート練習で、2ndvnのトップは終始英語で細かく丁寧に 教えてくださいました。日本のパート練と変わりません。
・指揮者はとても分かりやすく、指示も細かくユーモアもあって大変楽しかった。
・全体練習の指示は全部ドイツ語でした。私はドイツ人の方と同じプルトだったので、重要な指示は英訳してくれて、問題なくついていけました。
・ヴァイオリンのパート練習は日本人が4人いたので英語で行われました。トレーナーの先生は大変そうで少し申し訳なかったです。
・ドイツ語が少し理解でき、指示されたことは大体分かるのですが、プルトを組んだ人が次に弾く場所を毎回教えてくれたので一層助かりました。
・チェロトレーナーのギュンターさんはとても上品で、綺麗な音色を聞かせてくれ、また丁寧に細やかに指導してくださいました。彼の指導は、できていない小節を何度も繰り返し練習したり、難しいところは、平易に弾けるようにアイデアを出してくださったり、常にコチラ側のことを考えてくれている気がしました。
【日本のアマチュアオーケストラと比べて】
・指揮は、日本と変わらなかったように思います。終始穏やかな口調でユーモアを交えて、できていないところはきちんと指導してくださったので、安心して受けられました。
・ちょっと驚いたのは練習開始時間厳守なこと。一分も遅れず始まり、遅刻する人は皆無でした。夜間練習の終了時間はたいてい延びて、 初日は10時を回りました。
・演奏能力については、果たして自分ごときで大丈夫なのかと心配 していましたが、全く問題ありませんでした。弾けなくて恥ずかしいとか、隣に合わせようとか、あまりそういうことは考えていないでマイペースでした。隣に注意したり教えてあげたりしている様子 もなかったです。
ドイツ音楽は縦線がしっかりしているものが多いですが、必ずしもドイツ人皆がリズム感よく縦線を合わせられるとは限らないんだなぁ、と妙に感心しました。
・日本だと弾き方や弓順(うちのオケはポジションも)を細かく指定され、言われたことを実践するのに必死ですが、ドイツでは弓順等をあまり気にしているふうではなく、皆さん音楽が好きで音楽を楽しむために来ている、という感じでした。一番大事なことを再確認できてよかったです。
・練習の合間の休憩時間も練習している人はいなく、練習していると「休憩時間は休みなさい」と注意されました(笑)。ただ、管楽器は日本のオケの方がしっかりしているように思いました。
・ドイツでは休憩時間に個人練習する人はほぼいなくて、部屋からみんな出て行ってしまうので、「練習時間」と「休憩時間」の区別がとてもはっきりしていると感じました。
行く前にドイツ人の方から「ドイツではパウゼ(休憩)というとみんなクモの子を散らすようにいなくなる」と聞いていたので多分そうだろうなとは思っていたのですが、本当にそうでした。
日本では休憩時間でも席を立たずに個人練習をする人が多く、私も普段はそうしているので、ドイツに行ったらあまり練習しないでおこう、と思ってはいたのですが、自分の楽器でないので慣れないためと、本番前の休憩のときはさすがに個人練習してしまいました。
本番前でもドイツ人はソロのある管楽器の方除いて、ほとんど皆さん楽器を触ることはなかったと思います。
【ヴュルツブルクでの教会コンサート】
・本番は響きの良い教会でした。ステージは大変狭く、斜めにならないと弓がぶつかり弾き辛かったです。 本場ドイツの教会でブルックナーの響きに酔いしれトランス状態 になりながら己の幸せを噛み締めました。嗚呼!真に至福の時!!
楽しく弾き終えて打ち上げをして1時間ほどバスに乗り帰りました
【その他】
・コンミスとセカンドバイオリン講師の方は自分と同じくらいの年齢なのにすごく上手で、もっと練習頑張ろうと思ったり、ドイツ語勉強したくなったり、得られたものは大きかったです。
・チェロを借りたのですが、参加者のうちのひとりの方がご自分で作られた楽器で、大変びっくりしました。さすがにドイツだなと思いました。とても良く鳴るいい楽器で弾きやすかった。
・ドイツへは何度も行ったことがありますが、演奏会に参加したのは今回が初めてで、とても新鮮でした。音楽以外でも共通の意識を持った人たちと出会えて、音楽プラスいろんな話が出来てとても楽しかったです。また同じ日本人で参加された方たちからも、それぞれの所属されているオーケストラのお話をたくさん伺うことができてとても参考になりました。このような機会を与えてくださったJAO、所属するオーケストラに大変感謝しています。
・練習は21時まである日もありましたが、午後に2時間ほど休憩があったので、疲れを感じず、楽しく過ごせました。ゆったりスケジュールがくまれていたのがよかったと思います。昼食にフレッシュなサラダをいただけたのも午後のやる気につながりました。
・練習後は、冷えたバイツェンビール(有料)で疲れを癒し、メリハリの付け方が最高でした。ただ、食事の席や練習後の飲みはドイツ語なので、ドイツ語が話せる方が話の中に入っていけると思います。
・今後多くの人が、今回の私のようにドイツ人と音楽を通して交流を楽しまれるよう願っています。
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